【理論的な考察】ホイールの軽量化はフレーム軽量化の2倍しか効果がない

皆ロードバイクやクロスバイクの軽量化に躍起になっています。特に、リム、タイヤ、チューブ、リムテープ、ニップルなどの軽量化にはシビアになっています。これは「回転体外周部の軽量化は車体の軽量化の10倍の効果がある」と噂になっているためです。しかし、10倍という値の根拠はネット上のどこにもありませんでした。

ホイール軽量化の効果はフレーム軽量化の2倍以下

まずは結論から。理論的に考察してみると、ホイール外周部の軽量化は最大でもフレーム軽量化の2倍しか効果がない、というのが結論です。この考え方は、多くの物理屋さんに概ね認められています。

実際には外周部でも1.8~1.9倍。ハブに関していえば1.003倍です!!ハブの軽量化はステムやハンドルの軽量化と何ら変わりないことがわかります。

物理的に考えてみる

自転車が走るときのエネルギーに着目すると、運動エネルギーと回転エネルギーがある。加速するには、余分に漕いで運動エネルギーと回転エネルギーを増加させなけらばなりません。

運動エネルギーは、回転とかを考えずに、質量mのホイールが速度vで走るのに必要なエネルギー。運動エネルギーK1は以下の式で表せる。

次に回転エネルギーを考えます。物理には、回転体の「回転しにくさ」の程度を示す「慣性モーメント」という考え方があります。ホイールはリムやタイヤに多くの質量をもち、中心に回転軸があります。一般に回転軸から重心を離れるほど慣性モーメントは大きくなります。このような形状の回転体の慣性モーメントは次のように表すことができます。

そして回転エネルギーK2は、角速度ω(=v/R)を用いて次式で表せます。

つまり、運動エネルギー + 回転エネルギーは

ホイールを速度vで動かすのに必要なエネルギーは質量2Mを速度vで動かすのと同じエネルギーです。ホイールの質量がタイヤ外周部に集中していると考えた場合は、ホイールの重さは2倍に感じるということです。言い換えれば、ホイール軽量化の効果はフレーム軽量化の2倍ということです。意外な結果でしたか?タイヤ、チューブ、リムの軽量化はその他部品の軽量化よりも効果が大きいとは言え、

もう少しだけ厳密に

これまではホイールの質量がタイヤ外周部に集中していると仮定して慣性モーメントを計算しました。実際には、リムはタイヤより内側、ニップルはリムより内側、スポークはニップルより、ハブは中心に位置しています。実際には、ホイールの軽量化は2倍以下の効果しかないということです。

もう少しだけ厳密に考えてみます。25Cタイヤではハブからタイヤの外周部までの半径は約340mmです。各部品の重心までの半径rは、外周部から順におよそ以下の位置にあります。

部品 r/R

1+(r/R)2
(回転体の重量として感じる割合)

タイヤ 325/340 1.91
チューブ 325/340 1.91
リムテープ 311/340 1.84
リム 308/340 1.82
ニップル 298/340 1.77
スポーク 159/340 1.22
ハブ 20/340 1.003

合わせて1+(r/R)2も算出してみました。この値が回転体の重量として感じる割合です。これを参考に、とあるホイールから、軽量ホイールに変更したらどうなるか?「実際の軽量分」に加えて、物理的に計算される「等価質量の軽量分」、つまり我々が感じるはずの軽量分を示します。

部品 変更前 変更後 実際の
軽量分
等価質量
の軽量分
タイヤ corsa G2.0
(25C)
GP5000
(23C)

-53g
(253g→200g)

-101g
チューブ

Continental Race28
(20/25C)

マキシス
軽量チューブ
(18/23C)

-58g
(108g→50g)

-111g
リムテープ シマノ
リムテープ
ベロプラグ
(32H)
-8g
(15g→7g)
-15g
リム Mavic Open Pro TNI AL-22 -40g
(430g→390g)
-73g
ニップル ブラス
(32H)
アルミ
(32H)
-22g
(32g→10g)
-39g
スポーク DT
Chamopion
(32H)
DT
Competition
(32H)

-29g
(242g→213g)

-35g

ニップル
スポーク
スポーク本数

DT
Chamopion
(32H)

DT
Competition
(24H)

ニップル
-25g (32g→7g)

スポーク
-81g (242g→160g)

ニップル
-44g

スポーク
-99g

ハブ

シマノ
アルテグラ
FH-6800

TNI
エボリューションライト
-126g
(354g→228g)
-126g

実際に計算してみると、変更するパーツにもよりますが、やはりタイヤ、チューブ、リム、ニップルは効果が大きそうですね。位置的にはリムテープも効果が大きいところですが、そもそも最軽量のベロプラグを使用してももともとの軽量分が小さいので、効果はいまいちです。

スポークについては、種類と本数を両方変えれば、等価質量を100gも軽量化できるので、リム剛性高くしておいて、スポークで軽量化をはかるというのも手でしょう。もちろん乗り心地は悪化しますが・・・。

そして、ハブは本当に質量分しか減少しないことがわかります。ゴキソハブは重くしてでも回転を良くするという意味で、確かに理にかなっている。その分ハンドルやシートポストで軽量化するほうがよいわけです。

ホイールはやっぱり軽いほうがいい

一部の雑誌、ホイール販売サイト、ブログでは「リム重量がある程慣が大きいほうがスピードが落ちづらく、高速巡航が楽」と書かれている。

減速しにくいことは間違いではありません。しかし、足を止めた時の速度低下は大部分が空気抵抗やタイヤの転がり抵抗によるものであり、ホイールの慣性モーメントの差による減速の影響は小さいのです。

となれば、ホイールの慣性モーメントが大きい場合、速度維持しやすいというメリットはそれほど大きいものではなく、ただ加速しにくいというデメリットが存在するのです。

逆に、ホイールの慣性モーメントが小さいことによる減速しやすさというのは大きなデメリットではないし、加速性の良さは大きなメリットとしてついてきます。だからプロは軽量ホイールを使うのです。

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